「界面活性剤」の真実!バリアを壊してしまうって本当?!
界面活性剤は肌に悪そうなイメージがつきまとい、化粧品の成分の中では「嫌われモノ」の代表のような存在です。本当に悪しきモノなのでしょうか?実際は誤解されていることも少なくありません。何が悪くて、何が良いのか、界面活性剤の基礎知識に加え、肌への影響についてご紹介します。
目次
・そもそも界面活性剤とは?
・界面活性剤の種類
・界面活性剤なくして化粧品を作ることは難しい
・界面活性剤フリーなら安心?安全?
・アップデートしておきたい界面活性剤の知識
・界面活性剤は美容成分の浸透を促す成分
そもそも界面活性剤とは?
本来、水と油は混ざり合いません。身近な例ではドレッシング。使うときには振って混ぜても、すぐにまた分離して、界(さかい)ができてしまいます。その水と油の境目をなくし、混ぜ合わせる働きをもつのが「界面活性剤」です。
界面活性剤は水になじむ「親水基」と水になじまない「親油基」の両方を持っているため、少しの量で界面の性質を変化させることができるのが特徴です。
【界面活性剤】
界面活性剤は医薬品や食品、洗剤やシャンプーなど、身近にあるさまざまなものに使われています。用途は洗浄、乳化、可溶化、分散、起泡、消泡、殺菌などさまざま。とにもかくにも「水と油を混ぜ合わせる」、これが界面活性剤の役割です。化粧品の中には二層式の美容液がありますが、基本水と油の両方を使っていても油が浮いていることはありません。それは界面活性剤を使っているからです。
界面活性剤の種類
界面活性剤は原料によって大きく2つに分けることができます。
一つはもともと自然界に存在したものを活用した、天然由来の成分からつくられたもの。牛乳のカゼイン、大豆や卵黄に含まれるレシチン、大豆や高麗人参など多くの植物に含まれるサニポンなど、動植物油脂の中にはそのままで界面活性剤の役割を果たすことができるものがあります。マヨネーズも酢と油が分離していないのは卵黄に含まれるレシチンに界面活性剤としての働きがあるからです。牛乳が白い液体なのは、カゼインによって水分と乳脂肪分の乳化が行われているからです。
また、天然由来の成分から抽出した成分同士を合わせてつくられる界面活性剤もあります。化粧品に配合される天然系界面活性剤は主に下記の3種類になります。
【化粧品に配合される天然系界面活性剤】
・アミノ酸系 ココイルメチルアラニン酸Na、ココイルグルタミン酸Naなど。
・ベタイン系…コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタインなど。
ともに刺激が少なく環境にも優しい、自然派コスメではよく使われる界面活性剤です。
・石鹸系…ラウリン酸Na、ステアリン酸Na、オレイン酸Naなど
アルカリ性が強いため、肌が弱い人は注意が必要です。使用後、弱酸性の肌へ戻りづらくなる可能性があるからです。
もう一つは石油を精製して人工的につくられる「石油系合成界面活性剤」です。天然系に比べると安価で大量生産が可能なのが特徴です。天然系に比べると洗浄力が高く、機能性にも優れます。ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、スルホン酸Naなどがあります。
界面活性剤なくして化粧品をつくることは難しい
界面活性剤には大きく2種類あることを紹介しましたが、天然界面活性剤の活性力は弱いため、今世の中にある化粧品は、メイク、スキンケア、ヘアケアなどカテゴリーを問わず、界面活性剤が配合されていることがほとんどです。
主流は石油系の合成界面活性剤。きれいに汚れを落とすため、油分を配合した場合に乳化させて使用感を良くするため、安定性を保つため、美容成分の浸透を促すためなど、配合目的はさまざまです。
水と油は混ざらないため、乳液もクリームも界面活性剤を使わなければ、製造の段階で分離してしまいます。乳化や分散(均一に散らばっているようにすること)を施し、製品の中身を均一にして、いつも同じ状態で使用するには、界面活性剤は必要な成分というわけです。
必要でありながら、嫌われる石油系界面活性剤
化粧品をつくる上で重要な役割を担いながらも、良い印象を持たれていないのが石油系界面活性剤です。「石油系は肌への刺激が強い」「天然系の界面活性剤は安全だけど、石油系は危険」「バリア機能を壊す」と懸念している方も多いのではないでしょうか。顔に塗るものにギトギト油汚れを落としたり、洗濯物の汚れをきれいにする界面活性剤と同じものが入っているイメージを持っている方もいるようです。
なぜ、嫌われてしまうのでしょうか?確かに肌に負担になる界面活性剤もあることは事実です。界面活性剤が主成分の脱脂力の強いクレンジングや洗顔料を使用すると、界面活性剤の「油になじむ」性質がバリア機能を形成する細胞間脂質とくっついて溶かし、肌から流出させてしまうことが考えられるからです。つまり肌のバリアを壊すのは、主に「洗浄」に用いられる界面活性剤というわけです。しかし、界面活性剤を使わずにメイクや脂汚れを落とすのは非常に難しいのが現実です。界面活性剤と水を使って油を吸着させる。これが脂汚れを落とすメカニズムだからです。ちなみにその他の汚れは水洗いで落とせます。
つまり肌にやさしいクレンジングや洗顔料を選んだり、肌にのせている時間を短くしたり、その後の保湿ケアで肌のうるおいを守れば、界面活性剤は全てNGとはならないはずです。実際、クリームや乳液などの乳化に使われている界面活性剤は洗浄力がないので、バリアが壊れることはほとんどありません。しかも乳液やクリームに使う界面活性剤は、あらかじめ油分とくっついて配合されているので、細胞間脂質とくっついてバリア機能を壊すことはできません。
ただし、敏感肌やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患のある方は、気をつける必要があります。バリア機能が低下したり、崩壊したりしている場合、界面活性剤は簡単に肌の中に入ってきてしまうからです。
界面活性剤フリーなら安心?安全?
ここまで肌のバリアを壊すものは一部の界面活性剤。肌のバリアを壊すものばかりではないという理解をしていただけたと思います。ここで改めて、界面活性剤とは美容成分ではありません。全く同じ界面活性剤でも、それを洗浄成分として使ったときは洗浄剤、乳化成分として使った場合は乳化剤、殺菌成分として使ったときは殺菌剤、帯電防止剤として使った場合は帯電防止剤と呼びます。
また「界面活性剤フリー」を謳う製品も数多くあります。界面活性剤を使っていても、限りなく水性に近い界面活性剤を水性成分、限りなく油性に近い界面活性剤を油性成分とみなして「界面活性剤フリー」と表現することもあるようです。界面活性剤の代わりに乳化安定作用のある粘着剤や増粘剤などを利用することもあります。
水性成分だけで化粧品を製造するのであれば「界面活性剤フリー」もありですが、ローションでもバリア成分であるセラミドを配合するとなれば、界面活性剤が必要になります。セラミドは油性成分で、セラミドだけを配合してもバリア構造(層状のラメラ構造)は形成されないからです。
アップデートしておきたい界面活性剤の知識
最後に「合成界面活性剤は分解されずに肌に蓄積して、バリア機能を壊し続ける」と思っている方に向けて。確かに昔は生分解性の悪いものがありました。現在はというと、化粧品で使用されている界面活性剤は生分解性のあるものがほとんどです。特に油性成分と水溶性成分とがエステル結合したものは、一般的に化粧品によく使われますが、これは肌の上の酵素で容易に分解されます。
界面活性剤は美容成分の浸透を促す成分
いかがでしたか?日々のメイクオフや洗顔によって肌のバリア機能が弱まることは否めませが、だからといって汚れを放置することはそれ以上の肌トラブルを引き落とし、美容にとっておすすめできるものではありません。クレンジング料や洗顔料はバリア機能を壊しにくい、肌にやさしい製品を選ぶこと、そして洗浄によって肌のバリア機能が弱まることを意識して、肌バリアを守るお手入れを続けていきましょう。界面活性剤は美容成分の浸透を促す成分ですから、やみくもに毛嫌いしてはもったいない!肌本来の機能を底上げする美容成分のサポート役と心得て、賢く取り入れていきたいですね。