コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

収束の糸口が見えない新型コロナウイルス。マスク着用やソーシャルディスタンスを保つことは常識となりました。一方で懸念されていることも増えています。その一つがストレスや不安、話す機会の減少、口呼吸などがもたらす唾液分泌量の低下です。「汚いもの」というイメージが強く日陰の存在ですが、実はすこやかな美しさには欠かせない“高性能な水”が「唾液」なのです。コロナ禍だからこそ高めたい「唾液力」についてご紹介します。

 

唾液に新型コロナのウイルスが!?

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

唾液を使ったPCR検査が承認された新型コロナウイルス。鼻や喉の奥に綿棒を入れて粘液を採取する方法と比べると簡便なのが特徴ですが、承認は唾液にしっかりウイルスが含まれていることを意味します。なぜ唾液からウイルスが検出されるのでしょうか。それは、唾液線に新型コロナウイルスの受容体が存在するからです (⿐や喉からの検査も、⿐腺や⼩唾液腺から分泌される粘膜から検体を採取しています) 。 つまり「飛沫の拡散を防いで、お互いの感染リスクを減らす」という視点では、マスクはやはり有効な手段だということ。もちろん暦の上では秋とはいえ、残暑の厳しい今の時期は熱中症に気をつけながら、マスクの着脱には工夫する必要があります。

唾液は99%が水分。残り1%の働きがスゴイ!

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

「唾液の中にウイルス」 このように書くと、ただでさえ汚いもの扱いの唾液にますます負のイメージがついてしまいそうですが、本来の唾液は私たちが健康に生きていくために大切にしなければならないもの。99%は水分ですが、残りの1%に健康に役立つ物質が含まれていて、さまざまな働きがあるのです。

唾液の働き・その1:食べ物を飲み込みやすくする

硬くてぱさぱさした食べ物も、唾液と混ざることで噛みやすく、飲み込みやすくなります。

唾液の働き・その2:味を感じさせる

舌には味を感じる細胞「味蕾」があります。唾液で食べ物が分解され味蕾に味の成分が浸透されます。

唾液の働き・その3:消化を助ける

私たちは無意識のうちに多量の唾液を飲み続けていて、唾液は消化管へ運ばれています。唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)が食べ物に含まれるでんぷんを分解して、胃で消化されやすい状態にします。タンパク質を分解することはできませんが、消化を助けることで、腸でスムーズな便通を促して体の機能を高めます。美肌へもつながっているのです。

唾液の働き・その4:口の粘膜を保護する

口の中の粘膜をうるおして守ってくれているのも唾液です。硬い歯が舌や粘膜に当たっても傷がつかないのは、唾液が保護剤となってくれているから。熱いものや冷たいもの、刺激や酸などの化学的な刺激や硬いものの刺激からも守ってくれています。唾液がなければ食事をするたびに口の中は傷だらけになってしまいます。

唾液の働き・その5:口の清潔を保つ

食べカスを洗い流し、虫歯や口臭を防ぎます。

唾液の働き・その6:殺菌・抗菌作用

唾液にはリゾチームやラクトフェリンに代表される、抗菌物質が含まれています。なかでもコロナ禍において、頼りになるのが「IgA(免疫グロブリンA)」。体の中に入ろうとする有害なウイルスや細菌にくっついて体内への侵入をシャットアウトしてくれる抗菌物質です。

唾液の働き・その7:緩衝作用

酸性に傾いた口の中を中性に戻す作用のことです。緩衝作用が強いほど、虫歯になりにくい環境をつくり出すことができます。

唾液の働き・その8:再石灰化を促す

唾液には溶け出してしまう歯のミネラル成分を元の状態に戻す「再石灰化」という働きもあります。

唾液の働き・その9:排出作用

口に入ってしまった毒素や異物にまとわりついて、排出しやすくし体を守ります。

唾液の働き・その10:喉の渇きを知らせる

体内の水分量が減ると口が渇き、唾液の量も減っていきます。体に水分が必要なことを知らせてくれ、水分量を保つ重要な働きをしてくれます。

こうやって改めて整理してみると、唾液がいかに重要な働きをしてくれているか理解できます。「健康の基本は唾液にあり」と言っても過言ではないほど。中でも「6.殺菌・抗菌作用」で触れた「IgA(免疫グロブリンA)」は、「免疫界のエース」ともいわれる優れた抗菌物質です。免疫力の高い体づくりにはなくてはならない存在なのです。

唾液の分泌量。平均値は一日1〜1.5ℓ

マイナスなイメージを持たれながらも、実はウイルス侵入の最前線でも戦ってくれている唾液。30代が分泌量のピークとされ、年齢を重ねるほどに少なくなります。その一日の平均値は1ℓ〜1.5ℓほど。ペットボトルで想像するとかなりの量であることが分かります。

主な産生器官は口の周りにある3つの「大唾液腺」。最も大きいのが「耳下腺(じかせん)」で、下顎のえらが張った部分のすぐ後ろ、耳の前下方にあります。 「舌下線(ぜっかせん)」と「顎下腺(がくかせん)」は口の底深くにあります。

【3つの大唾液腺】

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耳下腺からはサラサラの唾液が分泌されます。口の中を清潔に保つ自浄作用や、食べ物を飲み込みやすくする役割があり、消化酵素が多く含まれているので消化吸収を助けます。一方、ネバネバの唾液は舌下腺から多く分泌されます。ネバネバの唾液は粘膜が傷付くのを防いだり、細菌を絡め取って体内への侵入を防いだりする役割があります。

また、唾液腺は自律神経の影響を受けます。緊張や興奮で交感神経が刺激されるとネバネバ唾液が、リラックスした副交感神経優位の状態ではサラサラ唾液が多くなるといわれています。

コロナ禍で唾液の分泌に黄色信号点滅

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

サラサラの唾液とネバネバの唾液。どちらも必要な唾液です。要はバランス。しかし、コロナ禍で、唾液が適切に分泌されない傾向が見られます。外出自粛や在宅勤務による話す機会の減少、マスクがもたらす口呼吸などが唾液の分泌量を減らしているからです。

口を閉じた状態、舌を動かさない状態=唾液線が刺激されない状態です。食事もオフィスではしっかり食べていたランチも、リモートワークの自宅では簡単に済ませがち。「ソーメンを茹でてランチは終了」とか「カップ麺だけで済ませてしまおう」など、心当たりはありませんか?

さらに、ストレスや不安も唾液の分泌に影響を及ぼします。緊張して、口の中がカラカラに乾くということは誰もが経験していることでしょう。

【唾液の分泌が減る5大原因】

1. 加齢による分泌能力の低下

残念ながら加齢に伴い多くの体内機能が低下していくのは事実。唾液の分泌能力についても例外ではなく、30代をピークに低下して行きます。

2. 口の周りの筋力低下

「マスク老け」をテーマに口元のたるみに着目した記事を紹介しましたが、口の周りの筋肉低下は、咀嚼力の低下につながります。この咀嚼力の低下は唾液の分泌量の減少にもつながるのです。噛むことが面倒になり、柔らかいものを好んで食べるようになることで、より筋力低下を助長され、悪循環に陥り、口元周りのほうれい線やマリオネットラインなどの悩ましいたるみへと直結してしまうのです。

3. 女性ホルモンの低下

女性の場合、更年期になると女性ホルモンの分泌が低下します。それに伴って唾液の分泌量も減ります。

4. ストレス

唾液腺は自律神経に支配されています。ストレスがあると交感神経が優位に立ってしまい、唾液の分泌が抑えられてしまいます。

5. 生活習慣

咀嚼不足、早食い、デジタルデバイスの使用頻度が高いビジネスシーン、会話の少ない生活、喫煙は唾液の分泌を低下させます。

唾液を機能させるには、量を増やすことが第一

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

前の項目では唾液の分泌が減る原因を紹介しましたが、厳密には唾液は何もしていなくても口の中に流れているの「安静時唾液」と、口を動かすと出てくる「刺激時唾液」に分かれます。

唾液力を高めるためには、唾液の量を増やす必要があります。そのためには、刺激を与えることで出る「刺激時唾液」を増やせばいいのです。では具体的な方法についてご紹介しましょう。

唾液を増やす方法・その1:よく噛んで食べる

噛めば噛むほど唾液は出てきます。食べ物を口に入れたら30回は噛むのが理想です。しかし数えてみればわかりますが、30回は難しいのが現実です。歯ごたえのある食材を選ぶ、調理法を工夫するなどして、10回から始めて、段々と増やすようにしましょう。

唾液を増やす方法・その2:舌を動かす

舌を動かすと、舌の下にある舌下腺や顎下腺を刺激することができます。できるだけ口を大きく開いて「あいうえお」と発声するだけでも、舌を動かす体操になります。舌を可能な限り前にピンと伸ばして、「べ~」とするのも効果的です。うれしいことに、舌を動かすことは、口元周りを鍛えることでもあるため、たるみ改善にも役立ちます。

唾液を増やす方法・その3:唾液腺マッサージをする

唾液腺のマッサージは唾液を増やす効果があります。食事の前に行うと噛みやすさや、消化の助けにもつながります。中でも効果が出やすいのが耳下腺マッサージです。唾液のサラサラ感が増し、身体の緊張もほぐれます。痛くない力加減で行いましょう。

【耳下腺マッサージ】

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

親指を除く4本の指を両頬に置いて、上の奥歯辺りを後ろから前に10回ほどゆっくりと回します。

【舌下線マッサージ】

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

両手の親指をあごの真下から舌を10回ほど押し上げるようにします。

【顎下腺マッサージ】

コロナ禍で唾液分泌量がダウン? 今こそ高めたい「唾液力」

両手の親指を顎下の骨から内側のやわらかい部分に当てて、耳の下から顎の下まで5箇所を押します。各箇所5回を目安に。

唾液を増やす方法・その4:キシリトールガムを噛む

キシリトールガムにはむし歯予防に加えて、唾液を増やす効果もあるといわれています。ただし噛み過ぎはNG。歯をすり減らしてしまうからです。また人によっては、摂取量により下痢をしてしまう場合もあります。

唾液を増やす方法・その5:水分補給

唾液の分泌量は体内の水分量と関連しています。体の中の水分量が少なければ唾液もつくることができません。夏は汗でも奪われがちな水分、熱中症対策も兼ねて喉が乾く前に補給しましょう。コーヒーやお茶、ジュースやスポーツドリンクよりも「水」もしくは「白湯」で水分補給を。

唾液力アップは難しくない!

これまで意識していなかった唾液が体にとってさまざまな役割を担っていたことがお分かりいただけたことでしょう。マスク生活で減少傾向にある唾液の分泌量、しかし、増やすことは決して難しいことではありません。特に「唾液腺のマッサージ」はすぐに口内に唾液が溢れるのが感じられるので、ぜひ習慣にしてくださいね。

加えて、マスクをしながらでも会話を楽しんだり、自宅では歌を歌ったり、たまにはメールやLINEではなく、電話でおしゃべりしたり。独り言でさえ、唾液にとっては大歓迎の行為と心得て、コロナ禍の今だからこそ、意識的に口を動かしてみましょう。唾液力を高めて、すこやかな美しさを維持しましょう。

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