今夏はピンク!レディー・ガガ、新作のテーマカラーは「思いやり」の色!

2020年3月11日、私は新作『クロマティカ(Chromatica)』のオフィシャル取材の通訳のため、LA(ロサンゼルス)・ハリウッド近郊のレディー・ガガの自宅にあるホームスタジオを訪れました。レコーディングスタジオの隣の客室が待合室になっていて、私の他にイタリア人とブラジル人の女性ジャーナリストがいました。世界各国のジャーナリストが入れ替わり立ち替わりで一日中取材を行なっていたのです。

彼女の新作とそのテーマカラーの「ピンク」への想いをご紹介しながら、今夏ファッションとして身にまとうピンクについて提案していきます。

世紀のポップアイコン、レディー・ガガ

誰もがその名を知るポップアイコン、レディー・ガガ。彼女の自宅スタジオを訪問したのは新型コロナウイルスがアメリカでも問題になり始めていた時期でした。ちょうど、トム・ハンクスと彼の妻リタ・ウィルソンがコロナに感染したことが発表された日。そのため、取材を許されていたのは、この期間すでに米国に居住していた記者のみでした。

先に取材を終えて客室に戻ってきたイタリア人ジャーナリストは、ガガが信じられないほど優しくて、ハグをしてくれたこと、そして彼女との距離がとても近かったことを、興奮冷めやらぬ様子で教えてくれました。「私の真横にガガが座っていたの!この時期に至近距離で話してくれるなんて、ガガ自身が考えたアイディアだと思うわ。わざとそうしてくれたのよ」。

スタジオの中に入ると、黒いライダースジャケットにピンクヘアのポニーテール姿のガガが、大きな笑顔で迎えてくれました。イタリア人ジャーナリストが言っていた通り、私はガガのすぐ隣の椅子に座りました。近過ぎて、彼女の長いまつ毛が一本一本はっきりと見えるほどでした。

レディー・ガガはどん底の状態で新作をレコーディングしていた⁉︎

今夏はピンク!レディー・ガガ、新作のテーマカラーは「思いやり」の色!

『クロマティカ』は、2016年発表の前作『ジョアン(Joanne)』や、アカデミー賞とグラミー賞を受賞した『シャロウ(Shallow)』収録の『アリー/スター誕生(A Star Is Born)』のサウンドトラックから一転し、ガガのルーツであるポップに立ち返ったアルバムで、全編ダンサブルでアップビートなポップで彩られています。けれど歌詞では、彼女のかつてないほどの苦闘が赤裸々に語られているのです。

このアルバムの制作を始めた当初、ガガはこの上なく暗い場所にいて、とてもウツで、毎日泣いてばかりいたそうです。彼女はもう何年も前からトラウマを抱えている上に、「線維筋痛症」という難病も患っているのです。しかし、今回どん底に落ちてしまったのは、2019年2月に婚約者のクリスチャン・カリーノと別れたことが大きな引き金になっていたのだろうと思います。

『クロマティカ』の制作中に悟った思いやりの大切さ

そんな状態のガガがニュー・アルバムを制作する気になったのは、プロデューサーで友人のブラッドポップに「一緒に曲作りしよう、君ならやれるよ」と声をかけられたから。ブラッドポップは制作中ずっと彼女を励まし続けました。ガガは耐え難い痛みを感じながらも曲をレコーディングし、新しい曲を聞き返したときに、自分の声がハッピーに聞こえることに驚いたそうです。そこで、彼女は「たくさんの痛みを抱えながらも、踊り切ることができるような曲を書こう」と決心し、制作を続けてアルバムを完成させました。この作品を作ったことで癒された彼女は、「今の私はハッピーな場所にいるの」と笑顔を見せました。

制作中、ガガは自分自身のことだけでなく、どうすれば世界の人々を幸せにすることができるだろうとずっと考えていたと語ってくれました。そして最終的にガガが辿り着いた結論は、自分に与えられた才能と地位を使って「世界中に“思いやり”を広めること」でした。『クロマティカ』は、彼女のそんな想いが込められた特別なアルバムなのです。

ピンクはガガにとって「思いやり」の色

この日、レディー・ガガは、冒頭の写真のようにピンク色のウィッグをポニーテールにしていました。この写真はファースト・シングル『ストゥーピッド・ラヴ(Stupid Love)』のMVでのガガの姿ですが、このMVとアルバムのジャケット写真に留まらず、ガガはピンク色をクロマティカ』のテーマカラーにしています。アリアナ・グランデと共演し、全米チャート1位を達成したセカンド・シングル『レイン・オン・ミー(Rain On Me with Ariana Grande)』でも、彼女はピンクの衣装を身にまとっていました。

「ピンクは、子宮と女性たちにインスパイアされた色なの。女性や子宮、創造や出産といったインスピレーションを強く感じられる色だから、私はピンクに惹かれたのよ。私は以前から、女性はたくさんの知恵を持っていると語ってきたわ。これは、かつてジョン・レノンがオノ・ヨーコについて言っていたことなの。“彼女は男性にはない知恵を持っている”ってね。でも私は、全ての性が知恵を持っていると思っていて、だから全ての性がピンク色を自分の色と思えるようになることを願っているの。ピンクは思いやりの色で、ハッピーな色だと思うから。私たちはお互いを愛し合うために、お互いを高め合うために、この地上にいるのだと思い出させてくれる色だと思うから」。

ガガがピンクをテーマカラーにした理由を聞いて、私は目が覚める思いでした。私自身は幼い頃からブルーやグリーンなどの色に惹かれていたので、「ピンクは女の子の色」という誰が決めたのか分からない既成概念が苦手でした。それで大人になってからも、自分がピンクを身に着けるのは抵抗感があったのです。でも、ガガの言う通り、ピンクは見ているだけで幸せ気分になれる色ですし、男性であってもピンクのシャツを着るのは素敵です。何よりも思いやりを感じさせる色なのだと考え直すことで、そのわだかまりが心の中から消えていくのを感じました。

「クロモセラピー」という色光を使う療法でのピンク色の効果

ガガの新作のタイトル『クロマティカ』は、「色彩」、そして「半音階」を意味しています。ガガはこのアルバム名で、人はさまざまな色を持つカラフルな存在であると同時に、半音ずつ音が上がっていく音楽のように、人と人は親密な関係にあることを表現しようとしたのです。

普段あまり耳にする機会のない単語ですが、これと似た言葉で、「クロモセラピー(色光療法)」と呼ばれるものがあります。患者に合う色の光を体に照らすことで病や症状を癒す療法です。そして、クロモセラピーでは、ピンク色の光は、心を穏やかにして精神を落ち着かせる効果があり、攻撃性や敵意や不安を抑制するとのこと。それは、まさに、ガガの語る通り、ピンクは「思いやり」の色なのです。

ピンクをファッションに取り入れてパワーアップ!

新型コロナウィルスの影響で、いやがおうにも新しい生活を余儀なくされた私たち。制限の多い生活の中で、気持ちが落ち込んでしまうこともあるかもしれません。そこで、ガガにあやかって、この夏のファッションに「ピンク」を取り入れてみませんか?私のようにピンクに苦手意識がある方もいるかもしれませんが、これを機会に敢えて挑戦してみることで、新しい自分に出会えるはずです!

ガガと同じような鮮やかなピンクヘアにしたり、全身ピンクのコーディネートをしたりする必要はありません。口紅やアイシャドウなどのメイクアップやネイル、リングやピアス、ネックレスなどのジュエリーやアクセサリー、または、バッグや靴、帽子などの小物の差し色として、ピンクを取り入れてみることから始めてはいかがでしょう?

くすみピンクなら大人に最適!

ジェシカ・アルバもくすみ感のあるピンクベースのメイクを披露。着用しているバスローブの色味や背後に見える彼女のバスルームにところどころあしらわれたベージュピンクのベースやタオルも洗練されていて素敵です。こんな大人のピンクなら今すぐにでも取り入れられます。

今すぐに取り入れたい!ピンク色のアクセサリーやジュエリー

夏に最適な透明感のあるアクセサリーやジュエリーなら今すぐにでも取り入れたいですね!色と貴石のダブルパワーを得られそうです。

2020年のバックの中にはマスクは必須!必ずつけるマスクだからこそ、ピンクを取り入れると気持ちも上がります。

ガガほどの鮮やかな色調ではなくてもピンクをヘアカラーに取り入れたい方には、日本でも人気の高い「ベージュピンク」のヘアカラーがおすすめです。女性らしい上品な色は、今、世界的に人気の高いヘアーカラーで、「アッシュピンク」とも呼ばれます。

まだまだ「ステイホーム(Stay Home)」が叫ばれているLAで、私はまず、ネイルをピンクにしてみました。指先が華やかになるだけで、家にこもっていても楽しい気分で過ごせるようになりましたよ。そして、今日も思いやりを忘れずに過ごそうとも考えるようになりました。

勇気を引き出すメイクアップ「ハウスラボラトリーズ(HAUS LABOTARTORIES)」

ちょうど、取材時のガガは、マットな質感のピンクの口紅をつけていました。これは実は、ガガ自身のブランドのアイテム。ガガは2019年9月に「ハウスラボラトリーズ(HAUS LABORATORIES)」というコスメブランドを立ち上げました。『クロマティカ』の発売に合わせて、ハウスラボラトリーズは「ストゥーピッド・ラヴ・アイシャドウ・パレット」やホットピンクのリップクレヨンなどの新作を発表しています。ガガのピンク・メイクをそのまま真似したい方にはおすすめ。日本でもAmazonで購入できます。

ガガはこのブランドの誕生を発表する時にインスタグラムに公開レターを掲載し、若い頃の彼女は一度も自分が綺麗だと思えなかったこと、そして働き者の母親が毎朝メイクをして輝くのを目にしてメイクの力を発見し、母親のように力強い女性になるという夢を叶えるために、メイクをし始めたというストーリーを語りました。

「そのときに、私はレディー・ガガを発明したの。鏡の中になりたかった自分が映っているのを見て、自分の中にスーパーヒーローを見つけたのよ。美しさが内側から自然に出て来ないときだってあるわ。でも、すでに持っていることを知らなかった私の勇気をメイクが引き出してくれたことに、本当に感謝しているの。私は、自分を開発して変身する能力を持つことによって、自分の美しさを見出したことを受け入れたわ。私は周りの人たちにヘンだって言われていたけれど、本当に、私はこの姿に生まれただけなのよ」。

最後の言葉は、『ボーン・ディス・ウェイ(Born This Way)』という彼女の代表曲のタイトルにかけています。こんなガガだからこそ起業できた「ハウスラボラトリーズ」は、コンプレックスを抱えている人でも自分を愛せるきっかけをつくるコスメブランドといえるでしょう。

レディー・ガガから日本のファンへ、思いやり溢れるメッセージ

ガガは取材の最後に、日本のファンの方へのメッセージを贈ってくれました。

「日本のファンの皆さん、私はあなた方を本当に愛しているわ。あなた方と特別なつながりを持ち続け、過去10年以上にわたって、美しい時間を一緒に過ごしてきたわね。あなた方が私の人生にいてくれて、心から感謝しているの。あなた方と一緒にパフォーマンスをする日が待ち遠しい。日本に行って、新しい思い出を築いて、できる限りの思いやりと勇気を与えることのできる機会を心から楽しみにしているわ。日本では慈善事業もやりたいの。私は日本が大好きで、日本の方のために良いことをしたいから」。

このメッセージからも、彼女が愛と思いやりに溢れる人であることが伝わってくると思います。この新作に伴うガガの世界ツアーは新型コロナウィルスの影響で延期が発表されました。来日公演の予定はまだ見えない状況です。でも、このような状況だからこそ、ガガの語る「思いやり」は、2020年を生きる私たちにとって最も必要なこと。まずはこの夏、ピンクを毎日に取り入れて、ガガのようなやさしい気持ちを広めるファッションを楽しんでみてはいかがでしょうか?

参考

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1297510/
レディー・ガガ『クロマティカ』 発売中
試聴・購入はこちら:https://umj.lnk.to/Gaga_Album
HAUS LABORATORIES: https://www.hauslabs.com

この記事を書いたライター

Beauty Lifestyle Writer

洋楽専門誌編集部に勤務したあと、1999年、カリフォルニア州ロサンゼルスに移住。フリーの音楽ライターとしてライナーノーツ執筆・取材・ライブレポートなどを数多くこなす。ファーマーズマーケットで仕入れる地元の食材を使ったナチュラルな生活と音楽ライブがエネルギーの源。

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