コロナ禍を体験して気付いた大切なこと、その一つは心の豊かさ。昨今では手間をかけて、丁寧にお茶を淹れる時間も見直されているといわれます。世界に目を向けても、日本茶は大人気。輸出量は右肩上がりです。海外の主流は抹茶ラテや加糖のグリーンティーですが、近年は煎茶の健康効果に着目する人も増えてきました。そこで今回は、改めて日本茶の魅力を整理してみました。ちょうど温かい飲み物が恋しい季節。緑茶時間を思う存分楽しんでみませんか?茶葉の“食べ方”も併せてご紹介します。

 

日本茶とは?緑茶とは?

ひと口に「お茶」といっても、シーンも種類もさまざま。カフェで飲むコーヒーにも私たちは「お茶する」「お茶しよう」などの言葉を使います。とはいえ、日本人が「お茶」という単語から真っ先に思い浮かぶのはやはり日本茶ではないでしょうか。

では「日本茶とは?」と聞かれたら?中には「緑茶のこと」と答える方もいるかもしれませんが、緑茶=緑色のお茶ではありません。実は、茶色いほうじ茶も緑茶です。

お茶の分類は、水色(すいしょく)は関係なく、発酵度(製造方法)によって分かれるからです。ちなみに緑茶は「不発酵茶」で、茶葉を摘んだら新鮮なうちに熱処理をして酵素の働きを止め、発酵が進まないようにしたもの。烏龍茶は「半発酵茶」、紅茶は「不発酵茶」です。いずれも原料は同じ「チャノキ」からつくられます。

【茶の分類】

緑茶の種類総まとめ

すでにほうじ茶も緑茶とお話しましたが、ここでは緑茶の基本的な種類を見ていきましょう。製法により7タイプに分かれます。

【煎茶】茶葉を蒸して揉んでつくります

煎茶は緑茶の代表格。日本人に一番飲まれているお茶です。煎茶になるチャノキは、日差しをたっぷり浴びて育ちます。摘まれた茶葉はすぐに蒸され、揉みながら乾燥させ形を整えます。浅蒸しと深蒸しの違いは、蒸しの度合い。浅蒸しは黄金色で、深蒸しになるほど緑色が濃くなります。産地によっては蒸さずに、釜で炒る場合もあります。

【玉露】覆いの下で育てられる高級茶

玉露用の茶葉は「被覆(ひふく)」を20日間以上(基準は地域によって異なります)行って栽培します。被覆は葉を摘む前のチャノキに覆いを掛けて日光を遮る育て方。収穫後は煎茶と同じ「蒸す→揉む」工程で作られます。玉露の豊かな旨みは被覆によるものです。旨み成分の「テアニン」は、日光を浴びると渋み成分の「カテキン」に変わってしまうからです。「覆い香(おおいか)」と呼ばれる特有の香りも楽しめます。

【抹茶】碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いて細かな粉末状に

抹茶は被覆期間が玉露よりも長くなります。収穫した茶葉を蒸した後、揉みではなく炉にかけて乾燥させ、碾茶と呼ばれる状態にします。そこからさらに葉脈や茎を取り除き、石臼で挽いて粉末状にしたものが抹茶です。

【かぶせ茶】玉露と煎茶のハーフ&ハーフ

被覆栽培を1週間前後行い、収穫後は煎茶と同じ工程をたどります。被覆期間が玉露よりも短いため、覆い香と旨みと爽やかさのバランスが取れた、玉露と煎茶の良いとこ取りのようなお茶です。

【番茶】成熟した茶葉が原料です

番茶はその年の新芽で作る新茶以外の茶葉を使ったお茶のことです。新芽を刈ったあとに育った芽で作られる二番茶も、さらにその次の芽で作られる三番茶も、新芽ではない硬い葉や大きく育ってしまった葉を使ったものも、すべて番茶。低級茶の印象がありますが、カフェインが少なくさっぱりとした味わいが特徴の一つです。

【ほうじ茶】焙煎で引き出す香ばしさが魅力

ほうじ茶は、煎茶や番茶を強火で焙煎して香ばしい香りを引き出したものです。苦みや渋みは抑え目。高温で焙じる過程でカフェインが減少するからです。子どもからお年寄りまで飲めるお茶として人気があります。

【玄米茶】茶葉の風味よりも玄米の香ばしさを楽しむ

煎茶や番茶に炒った玄米を加えた、香ばしい緑茶です。

最近の流れとしては、旨みより香りを重視

緑茶を淹れると、カテキン、テアニン(アミノ酸)、カフェイン、ビタミンCなどが溶け出します。味はこれらの成分量のバランスによって決まります。そして「よい日本茶は旨みが強い」がこれまでの定説でしたが、最近は若い世代を中心にアロマティックな香りを持つものにも人気が集まっています。品種としては「香駿」「藤かおり」「蒼風」など。

また、コーヒーのように「シングルオリジン」の茶葉が買えるお店も増えてきました。さらに茶葉のエキスで発酵させて、香りを蒸し製法の数倍高めた「酵素発酵茶」なるものも。静岡の「La 香寿」がよく知られています。

楽しみ方は、基本+自分流のアレンジで

緑茶を美味しく淹れるポイントは、茶葉の種類に適したお湯の温度と蒸らし時間です。ペットボトルは便利ですが、急須で淹れたお茶の味と香りにはなかなか勝てません。温度と蒸らし時間を工夫すれば、自分によりフィットした味を作り出すこともできます。

例えば、煎茶は70℃くらいのお湯で1分程度蒸らすと美味しく淹れられるといわれていますが、熱湯を使えばカテキンの溶け出しが増えて、苦みや渋みがぐっと引き出されます。1煎目より2煎目、2煎目より3煎目の方が成分が抜けていくので、後になるほど湯温を上げていくのも、最後まで美味しく味わうコツです。

【知っておきたい基礎知識】
●カテキン/苦み・渋み成分。80℃以上のお湯で溶け出しやすくなる。
●テアニン(アミノ酸)/旨み・甘み成分。水に溶けやすい。
●カフェイン/苦み成分。温度が高いほど溶け出しやすくなる。
●ビタミンC/酸み成分。ビタミンCは熱に弱いが、カテキンにはビタミンCを守る働きがある。
●沸騰させたお湯は、器を移し替える度に10℃くらい下がる。
●急須を揺すると苦み成分が余計に溶け出してしまう。
●最後の1滴まで注ぎ切る。
●未開封のものは冷蔵庫で保存。長期保存は冷凍庫。開封したら、密閉容器に入れて冷暗保存でなるべく早く飲み切る。

 

緑茶を飲むことで摂取できる水溶性成分

「お茶で一服」という言葉があります。これは、薬の服用からきた言葉で、 元々お茶は薬として飲まれていたようです。その働きを科学的に検証できるのが現在ですが、飲むことで摂取できるのは水溶性の成分です。

とんでもなく心強い「カテキン」

緑茶に最も多く含まれている成分です。ポリフェノールの一種で、渋みのもとです。
よく耳にする「緑茶カテキン」という言葉は緑茶に含まれる8種類のカテキンの総称のこと。緑茶に含まれるポリフェノールの約80%を占めます。

【カテキンの働き】
・脂肪の吸収を抑え、肥満を防ぐ
・抗菌殺菌作用
・抗ウイルス作用
・抗酸化作用
・虫歯や口臭を防ぐ
・LDL(悪玉)コレステロールの吸収を抑える

 

α波発生の「テアニン」

テアニンはアミノ酸の一種で、旨みと甘みのもとになる成分です。高級茶に多く含まれています。テアニンは摂取すると筋肉がゆるんで血流がよくなるため、リラックス効果に期待できます。実際、テアニンを摂るとリラックスしたときに発生する脳波のα波が出ていることが分かっています。

熱に弱いはずの「ビタミンC」がたっぷり

緑茶は熱に壊れやすいビタミンCを効率よく摂ることのできる数少ない飲み物です。1杯の煎茶で12mgくらい摂取できます。

ちなみに一日に必要とされるビタミンC摂取量は50mg。サプリメントなどで一日1000㎎以上を推奨する人もいますが、厚生労働省の推奨摂取量は一日100mg(15歳以上)。ビタミンCは体外に排出されやすいので一日に分けて取ることのできる緑茶は摂取に最適です。

抗酸化作用はもちろん、コラーゲンをつくるのにも必要なビタミンC。シミやソバカスの予防にも欠かせません。実は烏龍茶のビタミンC含有量はごくわずかで、紅茶にはまったく含まれていません。

飲み過ぎは危険? 緑茶の適量とは?

何事も過剰は害にもなります。水も飲み過ぎれば中毒を起こします。緑茶の場合は近年の研究で「健康な状態なら一日10杯程度ならメリットが勝る」といわれています。10杯飲む方は少ないかと思いますが、取り過ぎ注意の成分は「カフェイン」や「タンニン」です。常識的な量を心がければ、安心して毎日飲み続けることができます。カロリーは500mlあたりわずか10kcalです。

「カフェイン」は眠気を抑えたり、疲労を回復したりする効果がありますが、取り過ぎると睡眠障害や嘔吐などの症状が現れることがあります。「タンニン」は抗酸化成分ですが、鉄の吸収を妨げるため、鉄分のサプリメントを緑茶で飲むなどは言語道断。貧血気味の人やレバーなど鉄分の多いものを食べる時は避けましょう。焼き鳥店で「レバー」と「緑茶ハイ」も、好ましくない組み合わせですね。

緑茶を食べることで脂溶性成分も摂取!

緑茶は脂溶性の成分も豊富です。「食物繊維」「たんぱく質」「ビタミンA」「ビタミンE」「βカロチン」「ミネラル類」などがそれですが、残念ながら脂溶性成分はお湯には溶けません。

そう、茶殻は捨ててしまうのは、非常にもったいないのです。食べる方がさまざまな栄養分を摂取することが可能です。料理によっては刻んだり、すりつぶしたりという手間はかかってしまいますが…。ちなみに、急須の中に長時間おいた茶殻は雑菌繁殖や酸化の可能性があるので、使わないように。

たとえば、こんな「茶殻メニュー」はいかがでしょうか?

チャーハン

茶殻の水気を切って、そのままフライパンで他の具材と合わせて炒めるだけで完成です。

ひき肉料理や卵料理に!

茶殻の水気を切って、ハンバーグや肉団子に混ぜ込みます。肉の臭み消しにもなってくれます。ソースや餡にも散らして一緒にどうぞ。卵料理は卵焼きやオムレツ、かに玉などに。

炊き込みご飯に!

お米を炊く時に茶殻と昆布と煮干しと塩を入れるだけ。

揚げ物に!

茶殻の水気を切って、衣に混ぜます。茶殻だけを揚げて塩をまぶすだけでも美味しいです。

ふりかけに!

乾煎りしてすりつぶすとふりかけになります。ゴマや海苔、桜えびなどと一緒にミルで紛糾すればより風味豊かなふりかけに。

おひたしに!

茶殻に醤油やポン酢をかけても和えます。高級な茶葉には特におすすめです。

おやつに!

乾燥させた茶殻をホットケーキやクッキーに混ぜ込むだけで、お茶フレーバーとして利用できます。

「茶殻」ではなく、「茶葉」そのものを食べるメニューも!

スナック感覚で!

質の良い煎茶は、細長い棒状の茶葉が多いので、そのままポリポリ食べるのもありです。高級茶ほど旨みが癖になります。

おにぎりに

茶殻を使ってもよいのですが、茶葉をそのまま使うと風味がよく口当たりにも変化が。

こちらも参考に!

「お茶を食べる」健康法【前編】「ウーロン茶のゼリー」
「お茶を食べる」健康法【後編】「ほうじ茶ココプリン」と「ほうじ茶ポーク」

ストレスから守ってくれる緑茶

なじみ深い緑茶の意外な素顔が見えてきたのではないでしょうか?抹茶は茶葉を粉にしたものですが、簡単に楽しむことのできる粉末の煎茶もあります。産地や焙煎など、緑茶の選択肢は無限大です。

すでにコロナの状況はだいぶ落ち着いてきたように思えますが、カテキン、テアニン、カフェインは免疫力アップの手助けにもなります。心も体もリラックスさせてくれる緑茶は、内・外のストレスから守ってくれる心強い味方。緑茶のパワーを楽しみながら享受しましょう!

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